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「13:死神」中学1年D組担任(国語科)
先日、都内某所を歩いていると「東京タロット美術館」という看板が目に入りました。昔、ドイツでも同じような美術館に行ったことがあるなあと思いながらも受付で尋ねると、本来は予約制だけれどもたまたま入らせてもらえて、数百種類のカードを眺めて楽しい時間を過ごすことができました。
タロットカードは22枚の大アルカナカードと56枚の小アルカナカードの計78枚構成が一般的です。占いの道具として使うのであれば、カード1枚1枚に付されている抽象的な意味の組み合わせを直感的に読み取って、解釈する形で使用します。
若いころは「10:運命の輪 WHEEL OF FORTUNE」というカードが大好きでした。このカードが出てくるとなんだか良いチャンスに巡り合う気がしてちょっとテンションが上がったものです。また「21:世界 THE WORLD」のカードは文字通り「世界の完成」すなわち成功、達成を表すカード。これも素敵ですね。
ですが最近は「13:死神 DEATH」のカードが気になっています。このカードの意味は生物学的な死を表すものではなく、「強制終了・破局・終焉・中止」です。死神が白馬に乗って進んでいく。身分の高い人が命乞いをしてもその願いはかないません。希望は叶わない。強制的に終了される。終わりを告げられ一度無に帰するということを表しているのです。いい意味が全くないし、描かれている絵もおどろおどろしい。昔は嫌なカードだと思っていました。
ですが、最近やっとこのカードの本当の意味を理解できるようになってきました。このカードの裏テーマは「生まれ変わり」です。一度、取り返しのつかない失敗をする、傷つく、失う、そうやって何もかもが自分の手からこぼれ落ちた時、真っ暗な闇の中に放り込まれたかのような絶望を感じた時、人は違う考え方、別の道を選ばざるをえません。しかしあきらめること、やめること、変更することは失敗でも敗北でもありません。だってそうしないと新しいチャンスの入ってくるスペースがあかないのだから。一度死なないと生まれ変われない。カードはそう伝えます。静かに終わりを認めたとき、その先にはその人だけの新しい運命の輪が回り始めます。死神は新しい未来への導き手なのだ、今はそんな風に感じています。
職業柄、生徒から色々な相談を受けることがあります。時に彼らは苦しそうで、もうどうにも打開策がないような行き詰まりを感じることもあります。ですが、そんなときこそ№13のカードを思い浮かべます。行くところまで行ったら大丈夫。自己の変容が始まり、新しい人生の扉が開きます。そうして思ってもみなかった美しい風景を見ることができると断言します。そしてそのために必要なのは、すべての感情を感じきることと死神を感じるくらい苦しい生を生ききる覚悟なのだと思うのです。
とはいえ、やはり「死神」のカードが好きか?と聞かれたら「まあまあ」としか答えられないのですが。物事には清濁があり、禍福は糾える縄の如し。これは古今東西先人たちの知恵なのかもしれませんね。
