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「逆境」の創発学 中学2年石巻圏創発学フィールドワーク

投稿日2025/9/3

8/28(木)~30(土)中学2年の創発行事を宮城県の石巻圏で実施しました。

これまで中学では、第一次産業を中心に「体験」を元に自己の学びを深めてきた創発学ですが、今年は今までの学びをさらに深めるべく、東日本大震災により甚大な被害を受けた石巻圏(石巻・東松島・女川)でフィールドワークを実施しました。

テーマは、「逆境」の中に身を置き、元の状 態を取り戻す「復興」を越えて、さらに人々の「幸福」を創出するという挑戦を行っている方々から、その熱意や思いとともに、人々の知見を「体験」の中で学ぶことです。

初日は、石巻にある門脇小学校という震災遺構を見学しました。卒業式を数日後に控えた学校に津波が押し寄せ、火災に見舞われ大部分を消失した校舎を見学。

さらに、震災当時高校1年生で、津波によって祖母とともに自宅ごと流され、10日目に救助された方の凄絶な「語り」を聞き、津波の恐ろしさや避難の大切さ、なんとか生存できたことへの切実な思いや未来への希望を共有しました。

その日は、津波により全て流されてしまった土地で一から農業法人を立ち上げ、それまでの農業の課題に対峙し、オランダ式のスマート農業によって新たな収益や雇用を生み出している事業者へ赴き、これまで震災後14年の経緯と思いを、ミニトマトの摘果とパック詰めの体験をしながら共有しました。

「津波と合わせて、その後の台風による災害も大きな打撃を与えた。しかし、自分はこれだけ水に好かれているのだ。水が無ければ農業はできないのだから。そして、会社には仲間がいる。1人ではないのだ」。

この言葉は強く印象に残りました。

2日目は、全体を4グループに分けて体験プログラムを実施しました。

・北上川流域にて津波に流された土地に、世界の農業を学び、巨大なガラスハウスを建て循環型の溶液水耕栽培によりパプリカとトマトを栽培、「農業素人」ばかり250人の雇用を生み出し、地域活性化に取り組む事業者。

・津波をきっかけに漁師を営む世帯が半減、黒潮の蛇行や海水温上昇の中でホタテ養殖を行いながら、後継者不足に対して漁師の担い手育成事業に取り組み、県外から移住した2名の若手漁師を育成する漁師。

・漁師になろうと決意しホヤ養殖に取り組み、初出荷後、震災に襲われ、逆境の中、ホヤのブランド化に取り組み、さらにホヤの殻からセルロースを精製し活用する研究を東北大学と行っているホヤ漁師。

・三陸ワカメの養殖、ブランド化に取り組むも、近年の海水温の上昇による不漁を、漁協や行政任せにするのではなく、大学の研究者とタッグを組んで海水温の調査を行うなど、克服を目指すワカメ漁師。

・他の沿岸自治体が国からの補助金による巨大な防潮堤の設置を選択する中、住民の協議の結果、防潮堤を造らずに「海の見える街づくり」を選択した女川町の人々と14年の「復幸」の道のりと街の課題。

・北上川流域に広がる「耕作放棄地」を活用して、ホップの栽培を中心として農業による新しい社会活動を行っている、これも全員が農業経験者でない中挑戦を続けている事業者。

・増えすぎた鹿による「害獣」被害という社会課題を何とかするために、猟師の免許を持ち、駆除とジビエ料理への活用を模索しながらレストランを運営する料理人。

・石巻の自然や風景を用いたアートを通じた、土地と人々の「再生」を目的としたアートフェスティバルを中心となって企画・開催している理事の方とアート作品制作者。

などなど、体験しお世話になった方々は全て、従来の農業・漁業や街づくりから「一歩先をいく」方々であり、しかも多くは震災という「逆境」をきっかけとして、それを乗り越えるべく挑戦を始めた方々です。

これからの人生において、「逆境」や困難な状況に身を置くことも当然予想されるこの中学2年生たちが、体験の中から、人々の意志や知見を肌で感じ取りながら学び、大きな成果となったと実感しました。

さらにその夜は、朝日新聞仙台支局で震災後、震災報道を専門に当たられている記者の方をお招きして、実際の記事を取り上げながら、自分が体験したこと、知ったことを他者に伝えるために大切なことについて、講演していただき、深めました。

被災者に対する取材を行う上での心構えや記事を書く際の「見出し」を考えるコツについてなど、生徒たちが多岐にわたって質問していたのが印象的でした。

 

3日目の最終日はグループに分かれ、それぞれが体験したことを通じて考えた「課題」について、その解決方法も含めて発表を行いました。

発表は体験でお世話になった事業者さんをホテルにお招きし、それぞれの発表に講評をいただきました

中2の生徒らしく「率直な」「忖度のない」課題解決方法の提案に対して、講評をくださった方々も舌を巻いていました。

3日間、内容的に非常に「濃い」メニューでしたが、生徒諸君はしっかりと活動を実りある形で行いました。

感心したのは、体験後に、事業者さんにたくさんの質問を積極的にしていたことです。

実はこのフィールドワークの前に、朝日新聞の教育支援プログラムを利用して有効な取材やインタビュー方法についてワークショップを行ってもらいました。

その成果が如実に現れたと思います。

さらに取材した内容がしっかりと聞き取られてメモに残されており、それが具体的に発表の中に生かされていたことも大きな成果だと感じました。

学校にとって新たな大きなチャレンジとなった今回の創発行事でしたが、生徒たちは実りある活動を行い、創発学も深化し、新しい段階に進めたことを強く実感できました。

今回の学びは今後も継続され、年度末に成果発表を行う予定です。